三菱マテリアルの伸銅品事業

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この記事で分かること

バルブ向けの銅の中間材とは

バルブや水栓金具などの最終製品へ加工される前段階の一次金属素材(半製品)です。耐食性や加工性に優れる黄銅(真鍮)の棒材などで、切削やプレス加工を経てバルブ本体や弁軸等の各部品に成形されます。

鉛の役割とフリーにする方法

鉛は黄銅中に分散し潤滑や切りくずの分断を担い、切削性を大幅に高めます。鉛フリー化は、毒性の低いビスマスでの元素代替や、ケイ素添加等の組織制御(切りくずを脆く分断する相の生成)により達成されます。

撤退する理由

半導体部材やリサイクルなど高成長分野へ経営資源を「選択と集中」させるためです。汎用伸銅品は価格競争で収益性が低迷し、設備の老朽化に伴う更新投資に対する十分な回収が見込めないと判断されました。

三菱マテリアルの伸銅品事業

三菱マテリアルは、事業ポートフォリオ高度化の一環として、伸銅品事業における棒製品および「エコブラス®」鍛造品の製造・販売終了を発表していました。

 サプライチェーンへの影響を最小限に抑えるため、総合バルブメーカー・キッツのグループ会社である株式会社キッツメタルワークスと技術供与契約を締結したと発表しました。

バルブ向けの銅の中間材とは何か

 「バルブ向けの銅の中間材」とは、バルブ(弁)や水栓金具などの最終製品に加工・組み立てられる前段階の一次加工素材(黄銅棒・銅合金棒・鍛造素形材など)を指します。

 金属メーカーが地金やスクラップを溶かして規定の合金組成に整え、棒状や型材に成形した「半製品」の状態でバルブメーカーへ納入されます。

主な形態と用途

  • 黄銅棒(真鍮棒)・銅合金棒円柱や六角形の長尺棒材。バルブメーカーがNC旋盤などの切削機械で精密に削り出し、バルブ内部の弁体(弁座)ステム(開閉軸)、継手(ねじ部)などに加工します。
  • 熱間鍛造用ビレット・鍛造品棒材を適切な長さに切断し、加熱プレス機で粗成形したもの。バルブの本体(ボディ)ボンネット(蓋部)など、肉厚で複雑な立体形状を作るためのベース材となります。

なぜバルブに「銅(主に黄銅)」が使われるのか

特性バルブにおけるメリット
耐食性・耐水性水や大気と接しても錆びにくく、水道配管やガス配管の長期耐久性を保つ。
優れた被削性刃物で削りやすいため、水漏れを防ぐための超精密な面加工やねじ切りが容易。
高い成形性(熱間鍛造性)加熱すると柔らかくなり、複雑な流路を持つバルブ形状へ一気プレス加工できる。
気密性・強度組織が密で巣(空洞)ができにくく、高圧の水・ガスを閉じた際に漏れを生じさせない。

近年のトレンド:環境対応(鉛フリー材)

 従来は切削性を向上させるために微量の「鉛(Pb)」を添加した快削黄銅が主流でした。しかし、飲用給水設備の鉛溶出規制が世界的に強化されたため、現在は鉛を使わずにビスマスやケイ素などを添加して加工性を確保した「鉛フリー黄銅(エコブラス等)」への中間材のシフトが進んでいます。

バルブや水栓金具などの最終製品へと加工される前段階の一次金属素材(半製品)です。耐食性や加工性に優れる黄銅(真鍮)棒などで、切削やプレス加工を経てバルブ本体や弁軸といった各部品に成形されます。

鉛の役割は何か、どのようにフリー化するのか

 黄銅(真鍮)において鉛は加工性を飛躍的に高める「潤滑・切断材」の役割を果たしますが、鉛フリー化(無鉛化)は毒性の低い代替元素の添加金属組織の制御によって達成されます。

黄銅における鉛(Pb)の役割

  • 被削性(切削性)の向上: 鉛は黄銅組織に溶け込まず(不固溶)、微細な粒子として全体に分散します。これが切削時に潤滑剤として機能し、刃物の摩耗を激減させます。
  • 切りくずの分断: 切削時に鉛粒子が応力集中点(脆い破壊の起点)となり、切りくずが細かく千切れます。これにより切削工具への巻き付きや自動加工の停止を防ぎます。

鉛フリー(無鉛化)を実現する主な方法

ビスマス(Bi)の添加(元素代替法)

 鉛と同じ周期表15族のビスマスを添加します。鉛と同様に黄銅に溶け込まず微細分散するため、潤滑性と切りくず分断性をほぼそのまま再現できます(毒性は極めて低い)。

ケイ素(Si)の添加と硬質相の形成(組織利用法)

 銅・亜鉛にケイ素を数%添加し、組織内に硬くて脆い「γ(ガンマ)相」「κ(カッパ)相」と呼ばれる層を生成させます。これが切削時のクラック発生源となり、鉛なしで切りくずを細かく分断します(代表例:「エコブラス」)。

熱処理による結晶組織の制御

 熱処理や押出条件を管理して「α(アルファ)相」「β(ベータ)相」のバランスを最適化し、加工性と耐脱亜鉛腐食性、強度を均衡させます。

鉛は黄銅中で潤滑や切りくず分断を担い切削性を飛躍的に高めます。鉛フリー化は、毒性の低いビスマスによる代替や、ケイ素添加等の組織制御(切りくずを千切る脆い組織の生成)で同等の加工性を確保し達成します。

撤退するのはなぜか

 三菱マテリアルが伸銅品事業(バルブ向け等の銅棒・鍛造品)から撤退・生産終了を決めた主な理由は、経営資源の「選択と集中」と収益構造の課題にあります。

主な撤退理由

国内市場の長期的成熟 

 水道・住宅インフラ向け需要の長期的縮小を見越し、自社で製造・販売を維持するよりも、他社への技術供与・事業引き継ぎによって市場混乱を防ぎつつ撤退する方針をとりました。

成長・高付加価値分野への集中

 半導体製造装置向け部材、二次電池材料、銅リサイクル(都市鉱山からの資源循環事業)など、より高い成長性と利益率が見込める事業へ設備投資や人材を集中させるため。

汎用伸銅品の収益性低迷と競合激化

 汎用的な棒材・鍛造品分野において、国内外競合との価格競争が激化したことや、エネルギー価格・物流費の高騰により利益率が圧迫されていたため。

設備の老朽化と投資効率の判断

 製造設備の老朽化が進む中、今後必要となる設備更新投資に対して、十分なリターン(収益性)が得られないと判断したため。

半導体部材や資源リサイクルなど高成長分野へ経営資源を「選択と集中」させるためです。汎用的な伸銅品は価格競争の激化で収益性が低迷しており、設備の老朽化に伴う更新投資も見合わないと判断されました。

エコブラスの特徴は何か

 エコブラス(ECO BRASS®)は、三菱マテリアルが開発した鉛フリー(無鉛)黄銅合金で、鉛を使わずに優れた加工性と高い安全性を両立している点が最大の特徴です。

主な特徴

環境負荷の低減とリサイクル性

 有害な鉛を含まないため、製造工程での作業環境が改善されるほか、使用後のスクラップを高品質な素材として再利用(リサイクル)しやすいメリットがあります。

世界的な鉛規制への適合

 鉛含有率を極限まで抑えており、米国NSF/ANSI 61や欧州RoHS指令など、世界各国の厳しい飲料水器具・環境規制をクリアしています。

ケイ素(Si)利用による高い被削性

 ケイ素を添加して金属組織内に脆い相(γ相・κ相など)を生成させることで、切削時に切りくずが細かく分断され、鉛入り黄銅と同等の加工しやすさを実現しています。

高い強度と優れた耐食性

 一般的な快削黄銅(C3604等)と比較して引張強度・降伏強さが大幅に高く、水回り製品で問題となる「脱亜鉛腐食」や「ストレス腐食割れ(応力腐食割れ)」にも強い耐性を持ちます。

鉛を含まず厳しい環境・飲料水規制に適合する無鉛黄銅合金です。ケイ素添加による高い切削加工性と、従来の快削黄銅を超える強度・耐食性を兼ね備え、環境負荷が小さくリサイクル性にも優れる点が特徴です。

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