この記事で分かること

SUMINOEの合成皮革内製化
SUMINOEは車向け合成皮革内製化し、メキシコ・タイで現地生産を行うことを発表しています。
従来外部調達に依存していた自動車シート表皮材などの合成皮革について、自社での製造・加工プロセスを構築することで高付加価値化・コスト競争力の強化を図っています。
車向け合成皮革とは何か
車向け合成皮革(自動車用合皮)とは、車のシートやドアトリム、ダッシュボード、ステアリングなどの内装に使われる人工的な皮革風素材のことです。
織物や不織布などの基布(土台となる布)の表面に、ポリウレタン(PU)やポリ塩化ビニル(PVC)などの合成樹脂を塗り、レザー特有のシボ(皺模様)を施して作られます。
1. 一般的な合皮(服飾・家具用)との違い
自動車向けの合皮は、日常的な衣類や家具用合皮と異なり、極めて厳しい車内環境に耐える高い耐久性と性能が求められます。
- 耐候性・耐熱性:夏の直射日光による高温(70〜80℃以上)や紫外線を浴びても変色・劣化しにくい。
- 耐磨耗性:乗降時の強い摩擦や擦れに耐え、破れにくい。
- 難燃性:火災防止のため、国の安全基準を満たす火に強い性質を持つ。
- 防汚性・耐薬品性:汗、飲みこぼし、アルコール消毒液などが付着してもシミになりにくく、水拭き等で掃除がしやすい。
2. 自動車内装におけるメリット
- コストパフォーマンスと供給の安定性
本革(天然皮革)に比べて安価であり、均一な品質で大量生産・加工がしやすい。 - デザインや機能の自由度
色やシボの模様を自由にコントロールできるほか、通気性を高めるパンチング加工や軽量化など、車種に応じた多様な設計が可能。 - メンテナンスの容易さ
本革のような定期的なオイル塗布などが不要で、汚れが付いても水拭きで簡単に落とせる。 - サステナビリティ(ヴィーガンレザー・環境対応)
近年、動物由来の素材を使わない「ヴィーガンレザー」への需要向上や、バイオマス由来樹脂・リサイクル素材を用いた環境配慮型合皮の採用が急速に進んでいます。
3. 主な用途
- シート表皮材:シート全面、またはサイドサポート部分(本革とのコンビシート)
- ドアトリム・アームレスト:乗員の肘や手が触れる部分の質感向上
- インストルメントパネル(ダッシュボード周囲):車内の高級感演出
「本革の廉価版」という位置付けが強かったですが、近年は質感の向上、軽量化、環境配慮といった観点から、電気自動車(EV)をはじめ高級車から大众車まで幅広く積極採用されています。

基布の表面にポリウレタンや塩化ビニル等の樹脂を塗り、革の質感を持たせた自動車内装用素材。本革より耐熱・耐摩耗・防汚性に優れ、手入れが容易です。近年は環境配慮やEV化に伴い採用が拡大しています。
なぜ合成樹脂を塗るのか
合成樹脂(ポリウレタンや塩化ビニル)を塗る最大の理由は、単なる布(基布)に「本革のような見た目と手触り」を与えつつ、自動車に必要な「耐久性と保護機能」を付与するためです。
1. 革の質感・デザインの再現
樹脂の層を作ることで、表面に本革特有のシボ(しわ模様)や凹凸を立体的に刻むことができるようになります。これにより、本革のような高級感ある見た目やなめらかな手触りを生み出します。
2. 液体や汚れの侵入を防ぐ(防水・防汚)
織物などの布地だけでは、汗や水分、飲みこぼしが染み込んでしまいます。表面に樹脂の膜(皮膜)を形成することで水分を弾き、汚れが内部へ染み込むのを防ぎます。
3. 車内環境に耐える保護膜の役割
車のシートは日光(紫外線)、擦れ、高温などに常に晒されます。樹脂層が表面を保護するバリアとなることで、以下の耐久性を実現しています。
- 耐磨耗性:乗降時の強い擦れで布が破れるのを防ぐ
- 耐候性・耐熱性:夏の車内高温や紫外線による退色・劣化を防ぐ
- 難燃性:火が燃え広がりにくい性質を持たせる
土台となる布(基布)で「強度と柔軟性」を確保し、表面の合成樹脂で「見た目・手触り・耐久性」を担うという役割分担構造を作るために合成樹脂を塗っています。

土台の布に本革のような高級感ある見た目と手触りを与えるためです。さらに樹脂の膜を張ることで、汗や水の染み込みを防ぎ、日光や擦れ、火気に対する高い耐久性や防汚性を付与する役割も果たしています。
内製化を進める理由は何か
SUMINOE(住江織物)が車向け合成皮革の内製化(自社生産体制の構築)を進める主な理由は以下の通りです。
1. 収益性・コスト競争力の向上
外部メーカーからの調達に依存せず、原反(基布・樹脂層)の製造から仕上げまでを自社で一貫して行うことで、中抜きコストを削減し利益率を高めます。
2. 自動車メーカーのニーズへの迅速な対応
自動車業界ではデザインや質感、機能性(軽量化・環境対応など)の要求が急速に高まっています。自社で開発・生産ラインを持つことで、顧客の要望に応じた素材開発や試作・量産のスピードを大幅に向上させられます。
3. 地産地消体制の構築とサプライチェーン強化
メキシコやタイといった主要な自動車生産拠点の近くで自社生産を行うことで、輸送コストや関税リスク、為替変動リスクを低減し、安定供給体制(サプライチェーン)を確保できます。
4. 高付加価値・環境配慮製品での差別化
バイオマス由来樹脂やリサイクル素材を用いた環境配慮型合皮など、独自技術を取り入れた高付加価値製品を自社主導で開発・生産し、他社との差別化を図るためです。

外部調達からの脱却で収益性を高め、顧客の技術・デザイン要望へ迅速に対応するためです。また現地で自社一貫生産することで輸送費や為替リスクを低減し、独自技術による高付加価値化を図る狙いがあります。

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