長州産業のペロブスカイト太陽電池量産化技術

ペロブスカイト太陽電池のイメージ画像 脱炭素

この記事で分かること

長州産業のペロブスカイト太陽電池量産化技術

 経済産業省は次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の国産化・量産化に向けた国ぐるみの支援を行うことを発表しています。

 ペロブスカイト太陽電池は日本発の技術であり、従来のシリコン製太陽電池と比べて「薄い・軽い・曲げられる」という大きな特長があります。ビルの壁面や耐荷重の低い屋根など、これまで設置が難しかった場所への導入が可能となります。

 グリーンイノベーション(GI)基金などを通じて、リコー・長州産業に約1,000億円規模の予算枠を確保し、日本の主要メーカーへ段階的に補助金を交付して量産化技術の確立を後押ししています。

 前回はリコーのペロブスカイト太陽電池事業に関する記事でしたが、今回は長州産業に関する記事となります。

長州産業のペロブスカイト太陽電池事業の内容は何か

 長州産業のペロブスカイト太陽電池事業は、従来のシリコン製太陽電池の上にペロブスカイトを重ね合わせる「タンデム型ペロブスカイト太陽電池」の量産化・普及を目指す事業です。

 同社は住宅用太陽光発電システムの国内大手メーカーであり、その強みを最大限に活かした開発を進めています。

1. 主な事業内容(タンデム型の開発・量産)

  • タンデム構造による発電効率の飛躍的向上
    • 波長帯の異なる光をそれぞれ吸収する「シリコン」と「ペロブスカイト」を2層に重ねることで、従来のシリコン単体よりも太陽光エネルギーを大幅に無駄なく電気に変換します。
    • 目標値としてモジュール変換効率30%以上(従来の約1.5倍)を掲げています。
  • 住宅・産業用屋根市場向けの実用化
    • 既存の住宅屋根や工場屋根、営農型太陽光(ソーラーシェアリング)などへの設置を想定し、高耐久・高効率なモジュール(1㎡以上の大型サイズ)の開発を行っています。

2. 国の支援と今後のロードマップ

  • GI基金(94億円枠)への採択
    • 経済産業省・NEDOの「グリーンイノベーション(GI)基金事業」において、カネカとともに「タンデム型」の量産化推進企業として採択されました。
  • 2030年の目標
    • 量産規模:2030年度までに年間500MW(メガワット)以上の製造体制を確立。
    • 発電コスト:従来の住宅向けシリコンと同等以下の12円/kWh以下を実現。
    • 耐久性:屋外環境で20年以上性能を維持できる耐久性を確保。

 住宅用太陽光の施工・流通網を持つ長州産業が手掛けることで、完成したペロブスカイト太陽電池を一般住宅や店舗へスムーズに普及させる「出口戦略」を担う役割も期待されています。

長州産業はシリコン型の上にペロブスカイトを重ねる「タンデム型」の開発・量産を推進しています。国の支援(GI基金)を受け、モジュール変換効率30%以上かつ低コストな住宅・産業屋根向け高効率太陽電池の実用化を目指します。

なぜタンデム型は効率が良いのか

 タンデム型太陽電池が従来の単層型よりも圧倒的に発電効率が良い理由は、「太陽光の幅広い波長を2層で分担して無駄なく使い切る仕組み」にあります。

 太陽光は、紫外線から可視光、赤外線までさまざまな波長(エネルギー)が混ざっていますが、1種類の素材だけで受け止めようとすると限界が生じます。タンデム型はこの課題を巧妙にクリアしています。

高効率を実現する3つの理由

  1. 異なる波長(バンドギャップ)の組み合わせ
    • 上層(ペロブスカイト層):エネルギーの大きい短い波長(青色・緑色光など)を効率よく吸収します。
    • 下層(シリコン層など):上層をすり抜けてきた、エネルギーの小さい長い波長(赤外線など)をキャッチして発電します。
  2. 「透過」と「吸収」の最適化
    • 従来の単層セルでは、長が合わない光は「素通り(透過ロス)」するか、強すぎる光が「熱に変わって消滅(熱化ロス)」していました。タンデム構造では、上層が特定の光だけを吸収して残りを下層に通すため、エネルギーの取りこぼしが激減します。
  3. 発電効率の大幅な跳ね上がり
    • 従来のシリコン単体パネルの変換効率(一般的な実用値)が20%〜22%程度であるのに対し、ペロブスカイトとシリコンを重ねたタンデム型は、30%以上の高い変換効率を達成できるポテンシャルを持っています。

 光のエネルギーを余すところなく電気に変えるシナジーを生み出すため、タンデム型は次世代の超高効率太陽電池として期待されています。

上層のペロブスカイト層が短い波長(青色光など)を吸収し、下層のシリコン層がすり抜けた長い波長(赤外線など)をキャッチします。異なる波長の光を2層で分担して無駄なく発電するため、変換効率が大幅に向上します。

タンデム型の課題と長州産業の対策は何か

 タンデム型は、シリコンの上にペロブスカイト層を積層する(2重構造にする)ため、「2層接合部の品質確保」と「大面積での均一成膜・耐久性」が大きな技術課題となります。

 住宅用太陽電池大手の長州産業は、NEDO(GI基金)事業のもとで課題解決に向けた対策を進めています。

タンデム型の3大課題と長州産業の対応策

課題発生する問題長州産業の対応策
1. 大面積化での塗布ムラ1㎡以上の大面積(住宅屋根用サイズ)に塗布する際、膜厚ムラで変換効率が低下する。面内均一性の高い塗布・成膜技術の開発

下層のシリコン表面凹凸に影響されない高精度塗布プロセスの最適化。
2. 熱・水分による劣化(耐久性)屋外で20年以上使用する住宅屋根の過酷な環境に耐えられない。封止性能向上とセル構造の最適化

ペロブスカイト層の劣化を防ぐ高性能封止技術により「耐久性20年以上」を保証。
3. 製造コストとタクトタイム積層プロセスが増えることで製造時間(タクトタイム)とコストが増大する。短タクトタイム・高歩留まりの量産化確立

既存のシリコンラインを活用し発電コスト「12円/kWh以下」と30%以上の高効率を両立。

 長州産業はこれらにより、2030年までに「効率30%以上・耐久性20年・年産500MW」の住宅・屋根向け超高効率モジュールの量産・社会実装を目指しています。

課題は大面積での塗布ムラ、熱・水分による劣化、工程増加に伴うコスト高です。長州産業は下層への高精度塗布プロセスの確立、高性能封止による20年以上の耐久性確保、短タクトタイム化で克服を目指します。

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