パッケージ基板:Sn-Ag系はんだ

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この記事で分かること

はんだの種類

主な種類は、最先端のCuピラー等で主流の「標準鉛フリーはんだ(Sn-Ag系等)」、光通信やパワー半導体向けで高信頼性な「高温はんだ(Au-Sn系)」、熱に弱い基板や反り対策向けの「低温はんだ」の3つです。

Ag-Cuを混合する理由

共晶効果で融点を下げて熱ダメージを減らし、銀による析出強化で接合部の耐疲労性を高めるためです。また、予め銅を混合しておくことで、溶けた錫が基板側の銅電極を溶かしてしまう「銅喰われ」を抑制できます。

共晶効果と融点が下がる理由

共晶効果とは、複数の金属を特定の比率で混ぜると単体より融点が下がる現象です。異種原子の混入で結晶構造がひずんで結合が弱まることや、混ざり合った液体状態の方が熱力学的に安定するために融点が下がります。

パッケージ基板:Sn-Ag-Cu系はんだ

 パッケージ基板とは、半導体チップ(ダイ)を載せ、マザーボードなどのメイン基板に接続するための中継基板のことです。半導体チップは非常に微細な端子を持ち、そのまま一般的なプリント基板(PCB)に直接実装することは極めて困難です。

 そこでチップとマザーボードの間に介在し、電気信号を橋渡しする役割を持つのがパッケージ基板です。

 従来の半導体の微細化による性能向上が限界に近づく中、半導体の先端パッケージング技術だけでなくビルドアップ多層構造による高密度・微細配線が求められ、半導体性能向上の新たな競争軸となっています。

 前回は、リップチップでの接続方法やはんだによる接続に関する記事でしたが、今回は実際に用いられるはんだにどのような種類があるのかに関する記事となります。

フリップチップボンディングのはんだにはどんな種類があるのか

 フリップチップボンディングで使用されるはんだは、環境規制(RoHS指令)への対応や、デバイスが要求する耐熱性・接続ピッチに応じて使い分けられています。

 主に融点(溶ける温度)や組成によって、以下の4つのグループに分類されます。


1. 主流の「標準鉛フリーはんだ」(融点:約210〜220℃)

 環境負荷の低い錫(Sn)をベースとした材料で、現在の半導体実装の標準です。

  • Sn-Ag-Cu(スズ・銀・銅 / 通称:SAC系)
  • 特徴: フリップチップに限らず、電子基板実装で最も実績がある組成(例:SAC305など)。電気伝導性や機械的強度のバランスが優れています。
  • Sn-Ag(スズ・銀)
  • 特徴: 最先端半導体で主流の「Cu(銅)ピラーバンプ」の先端(キャップ部分)に非常によく使われます。銅と接合した際に優れた信頼性を示します。

2. 高機能・パワー半導体向けの「高温はんだ」(融点:約280℃〜)

 過酷な高温環境で動作するデバイスや、多段階で何度も熱をかける製造プロセスで選択されます。

  • Au-Sn(金・スズ / Au 80%, Sn 20%)
  • 特徴: 融点が280℃と高く、フラックス(洗浄剤)を使わずに高真空での接合が可能です。非常に高価ですが、耐食性と熱伝導性が極めて高いため、光通信用レーザーダイオード、MEMS、車載パワー半導体などの高信頼性用途に必須の材料です。
  • 高鉛はんだ(Pb-Sn / 鉛を85%以上含むもの)
  • 特徴: 融点が300℃以上と高く、かつては積層チップの内部接続などに多用されました。RoHS指令の規制対象ですが、代替困難な一部の最先端・防衛・宇宙用途向けに例外として限定使用されるケースがあります。

3. 熱ダメージを抑える「低温はんだ」(融点:約140〜160℃)

 熱に弱い基板や、薄型チップの熱反りを極限まで抑えたい場合に使用されます。

  • Sn-Bi(スズ・ビスマス)
  • 特徴: 融点が約13℃と非常に低く、リフロー温度を低く抑えられます。
  • Sn-In(スズ・インジウム)
  • 特徴: 融点が約157℃で、ビスマス系よりも柔軟性(延性)があり、熱ストレスに強い特徴があります。

はんだ種類の比較

はんだ系統主な組成融点主な用途・特徴
標準鉛フリーSn-Ag-Cu / Sn-Ag約217〜221℃現在の主流。CPU、GPU、Cuピラーキャップなど
金共晶 (高温)Au-Sn (Au80/Sn20)約280℃光通信デバイス、パワー半導体、高信頼性・高価格
高鉛 (高温)Pb-Sn (高鉛)300℃以上一部の産業・宇宙用などの規制除外用途
低温はんだSn-Bi / Sn-In約139〜157℃熱に弱い基板用、チップの熱反り対策

 最先端のAI半導体(HBMなど)や高性能SoCの分野では、微細な銅ピラーの先端に「Sn-Ag(スズ・銀)」をめっきで形成する方式がデファクトスタンダードとなっています。

主な種類は、最先端のCuピラー等で主流の「標準鉛フリーはんだ(Sn-Ag系等)」、光通信やパワー半導体向けで高信頼性な「高温はんだ(Au-Sn系)」、熱に弱い基板や反り対策向けの「低温はんだ」の3つです。

なぜ、Ag-Cuを混合するのか

 ベースとなる錫(Sn)に銀(Ag)と銅(Cu)を混ぜることで、現在の主流である「SAC系(Sn-Ag-Cu)鉛フリーはんだ」になります。

 これらを混合する理由は、主に「融点を下げる」「強度を上げる」「銅の溶け出しを防ぐ」という3つの冶金学的(材料科学的)なメリットがあるからです。

1. 融点を下げて扱いやすくする(共晶効果)

  • 純粋な錫(Sn)の融点は232℃です。
  • ここに銀と銅を絶妙な比率(例:銀3.0%、銅0.5%)で混ぜると、成分全体が最も低い温度で同時に溶ける「共晶点」が生まれ、融点が217℃まで下がります。
  • これによりリフロー時の加熱温度を低く抑えられ、熱に弱いチップや基板へのダメージを減らすことができます。

2. 接合部の強度と寿命を高める(析出強化)

  • 銀(Ag)を混ぜると、はんだが凝固する際に錫と反応し、金属間化合物(Ag3Sn)の非常に微細な結晶粒子が形成されます。
  • この粒子がはんだの組織全体を内側から補強する役割(析出強化)を果たします。結果として、デバイスが動作する際の熱伸縮(熱サイクル)に耐える強い耐疲労性が生まれます。

3. 基板の銅電極が溶けるのを防ぐ(銅喰われの抑制)

  • 高温で溶けた錫(Sn)は、接触している基板のパッドやCuピラーの「銅」を激しく溶かし込もうとする性質(銅喰われ現象)があります。電極が削れると接続不良の原因になります。
  • あらかじめはんだ側にわずかな銅(0.5%程度)を混ぜておくことで、錫の「銅を溶かしたい欲求」を先回りして満たし、基板側の銅電極が削られるのを抑制します。

4. なじみやすさ(濡れ性)の向上

  • 銀が加わることで、溶けたはんだが電極表面にサッと広がって馴染む「濡れ性」が向上し、気泡(ボイド)の少ない確実な接合を作りやすくなります。

 このように、Sn・Ag・Cuの3要素が合わさることで、「熱ダメージの低減」「構造の頑丈さ」「電極の保護」を同時にクリアできるため、鉛フリーはんだの決定版として広く普及しています。

共晶効果で融点を下げて熱ダメージを減らし、銀による析出強化で接合部の耐疲労性を高めるためです。また、予め銅を混合しておくことで、溶けた錫が基板側の銅電極を溶かしてしまう「銅喰われ」を抑制できます。

共晶効果とは何か、なぜ融点が下がるのか

 共晶効果とは、2種類以上の異なる金属(または物質)を特定の比率で混ぜ合わせたときに、それぞれの単体の融点(溶ける温度)よりも大幅に低い温度で、一斉に溶けたり固まったりする現象のことです。その最も低い融点を示す配合比率を「共晶組成」、その温度を「共晶点」と呼びます。

 例えば、純スズ(Sn)の融点は232℃、純銀(Ag)の融点は962℃ですが、これを「Sn 96.5% / Ag 3.5%」の比率で混ぜると、221℃溶けるようになります。

 なぜ混ぜるだけで融点が下がるのか、理由は主に原子の並びと熱力学の2つの視点から説明されます。

1. 原子の規則正しい並びが「ひずむ」から(原子レベルの理由)

 純粋な金属(例えばスズだけ)の状態のときは、同じ大きさの原子が寸分の狂いもなく綺麗に整列して、強い結合力で結晶を作っています。この強固なネットワークを壊して液体にするには、高い熱エネルギー(高温)が必要です。

 しかし、そこに大きさや性質の異なる別の原子(銀や銅など)が入り込むと、規則正しい結晶の並びに「ひずみ」や「乱れ」が生じます。

 均一な結合が部分的に弱まるため、純金属のときよりもずっと少ない熱エネルギー(=低い温度)で結晶構造が崩れ、バラバラの液体になりやすくなります。

2. 混ざった液体の方が「安定」していられるから(熱力学的な理由)

 自然界の物質には「バラバラに乱雑に混ざり合っている状態(エントロピーが大きい状態)を好む」という根本的な性質があります。

  • 純金属: 固体から液体になっても、中身は同じ原子だけです。
  • 合金(混合物): 液体になると、異なる原子同士が自由に動き回って最高に乱雑に混ざり合うため、熱力学的に非常に「居心地が良い(安定した)」状態になります。

 この「混ざり合った液体」の居心地が良すぎるため、温度を下げていっても物質はなかなか元の綺麗な結晶(固体)に戻ろうとせず、より低い温度まで液体の状態を維持しようとします。これが、結果として「融点が下がる」現象となって現れます。

 冬に路面が凍結するのを防ぐために塩(塩化カルシウム)を撒いたり、水に砂糖や塩を溶かすと0℃でも凍らなくなったりします。これも本質的には共晶効果と同じ「混ざりものがあると、液体でいられる温度の範囲が広がる(融点・凝固点が下がる)」という物理現象です。

共晶効果とは、複数の金属を特定の比率で混ぜると単体より融点が下がる現象です。異種原子の混入で結晶構造がひずんで結合が弱まることや、混ざり合った液体状態の方が熱力学的に安定するために融点が下がります。

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