リンテックの新規研究開発拠点

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この記事で分かること

開発する電子材料

AI半導体や2.5D/3D実装向けの仮固定・剥離材料をはじめ、6G通信に対応する低誘電・高周波材料、次世代電池やパワー半導体向けの耐熱機能性部材などを開発します。MIを活用し高速に創出する計画です。

仮固定・高精度剥離材料とは何か

半導体製造で極薄化したウエハを加工中に支持基板へ一時固定し、加工後に回路を損傷させずきれいに分離・剥離する機能性材料。HBMや3Dパッケージなど先端半導体の歩留まり向上に不可欠な部材です。

レーザーで剥離できる理由

透明なガラス基板を透過したレーザー光が、接着界面の光吸収層に集中照射されます。光エネルギーにより界面の樹脂が一瞬で局所的に熱分解(アブレーション)を起こし密着性が失われるため、無負荷で剥離できます。

リンテックの新規研究開発拠点

 リンテックは、持続的成長に向けた新規事業創出の加速を目的に、兵庫県神戸市のポートアイランド内に約80億円を投じて新たな研究開発拠点を開設することを発表しました。2028年度下期の稼働を目指しています

 同社の長期ビジョン「LINTEC SUSTAINABILITY VISION 2030(LSV 2030)」における成長戦略の根幹をなす取り組みであり、従来の粘着応用技術や表面改質技術の枠を超えた領域での基盤技術を構築し、先端電子材料やエネルギー変換デバイス向け新素材、環境に配慮したバイオマス材料など、社会的課題の解決につながる高付加価値分野の創出に特化します。

どんな電子材料を開発するのか

 リンテックが神戸の新拠点をはじめとする研究開発で注力する「電子材料」は、同社が得意としてきた従来の「粘着応用技術」や「表面改質技術」の延長にとどまらず、AI半導体・次世代通信・環境エネルギー領域に向けた未踏の機能性材料をターゲットとしています。

主な開発対象と技術方向性

領域具体的な材料・技術期待される用途・役割
次世代半導体・先端パッケージ・仮固定・高精度剥離材料
・薄型化プロセス用機能性シート
AI半導体や2.5D/3Dパッケージ(チップレット)製造時に、極薄化されたウエハやチップを保護・固定し、必要な工程後に熱や光で熱ダメージなく剥離する材料。
高周波・次世代通信(6G/車載)・低誘電(Low-k / Low-Df)接着・絶縁材料
・耐熱・高信頼性コート材料
高速通信回路での信号伝送損失(ロス)を低減する特殊高分子・接着材料。ミリ波・太赫(テラヘルツ)波帯に対応する基板・実装用材料。
エネルギー変換デバイス材料・次世代電池(固体電池・ペロブスカイト等)向け部材
・パワー半導体関連周辺材料
充放電や熱効率を高める機能性バインダー、集電体保護フィルム、パワー半導体(SiC/GaN)製造工程用の高耐熱プロセス材料。
高機能・環境配慮エレクトロニクス材料・バイオマス由来の電子部材
・易解体(リサイクル容易)粘着材料
環境負荷を低減しつつ高い光学・電気特性を持つ高分子材料や、使用後に容易に分別・リサイクルできる電子材料。

神戸拠点でのアプローチの特徴

  • 「知の共創」による新分野開拓関西圏に集積する大学や先端研究機関、他企業とのオープンイノベーション(共同研究)を前提としており、従来の枠組みに囚われないまったく新しい合成・高分子材料を探索します。
  • マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の活用AIや機械学習を活用した「データ駆動型開発」を全面的に導入し、高機能な電子材料の分子設計から配合最適化までの期間を飛躍的に短縮することを目指しています。

 さいたま市の「アドバンストディベロップメントセンター」(先端半導体材料の実装評価拠点)など既存拠点とも連携しながら、神戸ではより中長期的な新規事業の核となる次世代電子材料創出に特化していく構えです。

AI半導体や2.5D/3D実装向けの仮固定・剥離材料をはじめ、6G通信に対応する低誘電・高周波材料、次世代電池やパワー半導体向けの耐熱機能性部材などを開発します。MIを活用し高速に創出する計画です。

仮固定・高精度剥離材料とは何か

 仮固定・高精度剥離材料(Temporary Bonding and Debonding Materials, TBDB)とは、半導体の製造・加工時に、薄く割れやすいウエハやチップを一時的に別の支持基板(ガラスやシリコンなど)にしっかり貼り合わせて補強(仮固定)し、加工が終わった後に極めて小さな負荷で綺麗に剥がす(高精度剥離)ための高機能接着・フィルム材料のことです。

なぜこの材料が必要なのか

 AI半導体やHBM(高帯域幅メモリー)、2.5D/3Dパッケージといった先端半導体では、チップを多層に積層するため、ウエハの厚みを数十マイクロメートル(髪の毛の太さ以下)まで極限まで削り落とす必要があります。

 しかし、ここまで薄くなったシリコンウエハは紙のようにたわみ、わずかな力や熱で割れてしまいます。そこで、以下の手順で加工を行います。

  1. 仮固定(Bonding):薄化する前のウエハを、専用の接着材料を使ってガラスなどの硬い「支持基板」に貼り合わせる。
  2. 加工(Processing):支持基板で補強した状態で、裏面研削(薄化)、TSV(シリコン貫通ビア)形成、回路形成などの高温・微細加工を行う。
  3. 高精度剥離(Debonding):すべての加工が終わったら、素子回路にダメージを与えずに支持基板だけを綺麗に分離する。

「高精度剥離」に求められる主な技術・方式

 加工中は強力に固定しつつ、外す時は「サッと綺麗に」剥がせることが条件となります。主に以下のような剥離方式が存在し、リンテックなどの材料メーカーは用途に応じた接着・剥離メカニズムを開発しています。

  • レーザー剥離(Laser Ablation)ガラス基板越しにUVレーザーなどを照射し、粘着層の界面を光分解させて瞬時に外す方式。微細回路への熱ストレスが少なく、先端パッケージの主流となりつつあります。
  • 熱スライド剥離(Thermal Slide)加熱して接着剤を軟化させ、横方向にスライドさせて剥がす方式。
  • メカニカル剥離(Mechanical Peel-off)室温環境下で、制御された剥離力を用いて物理的にスムーズにペリペリと引きはがす方式。
  • 化学溶解剥離(Chemical Dissolution)端部から溶剤を浸透させて接着層を溶かし出す方式。

開発における技術的ハードル

 この材料には一見矛盾する2つの機能が高度に求められます。

  • 加工時のタフさ:250〜300℃以上の耐熱性、薬品(酸・アルカリ)への耐性、高い平坦性の保持。
  • 剥離時の優しさ:微細な回路やTSV構造を破壊しない超低ストレス剥離、および剥離後にウエハ側に一切の接着剤成分を残さない残渣フリー性。

 HBMなどの積層数増加に伴い、半導体メーカーの歩留まり(良品率)を左右する極めて重要なキーマテリアルとなっています。

半導体製造で極薄化したウエハを加工中に支持基板へ一時固定し、加工後に回路を損傷させずきれいに分離・剥離する機能性材料。HBMや3Dパッケージなど先端半導体の歩留まり向上に不可欠な部材です。

なぜレーザーで剥離できるのか

 レーザー剥離(レーザーデボンディング)は、「光を通す素材」と「光を吸収する素材」の組み合わせと、局所的な熱分解(アブレーション)を利用して、接着力を一瞬で失わせる技術です。

レーザー剥離の仕組み

  1. レーザーの透過支持基板として使われるガラスなどは、照射するレーザーの波長(紫外域など)に対して透明です。そのため、レーザー光はガラスを一切傷つけることなくそのまま通り抜けます。
  2. 界面での光エネルギー吸収ガラスと接着層の間、あるいは接着層の中に、特定のレーザー光を激しく吸収する「光吸収層(犠牲層)」や特殊な成分が挟まれています。通り抜けたレーザー光はこの極薄の界面層だけにピンポイントで吸収されます。
  3. 瞬間的な熱分解(アブレーション)吸収された光エネルギーは、ごく一瞬で高熱や光化学反応に変換されます。これにより、界面の物質が局所的に熱分解・ガス化(アブレーション)を起こします。
  4. 接着力の消失と分離この微小な爆発的エネルギーや分解によって界面の密着性が完全に失われ、ウエハやチップ側に一切のダメージ(機械的ストレス)を与えることなく、ガラス基板をスッと持ち上げて剥離できるようになります。

 この手法の最大の強みは、「加工中は強力にくっついているのに、剥がすときは熱や物理的力をほぼ加えずに一瞬で剥がせる」という点にあります。先端半導体の薄型化・微細化が進む中、チップの反りや破損を防ぐための必須技術となっています。

透明なガラス基板を透過したレーザー光が、接着界面の光吸収層に集中照射されます。光エネルギーにより界面の樹脂が一瞬で局所的に熱分解(アブレーション)を起こし密着性が失われるため、無負荷で剥離できます。

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